【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

肌の赤みや咳など、こうして環境を変えて適切な治療を受けさせればこんなにもよくなる。
塗り薬で肌の痒みは減り、咳で眠れないような激しいものでもない。

ヴァネッサはここに来たばかりの時にはスープを半分すら飲めなかった状態だった。
本人はそれで当たり前のような顔をしていたが、どう考えたって異常だ。

その証拠に料理や食材の名前を知らないどころか、何が食べたいかと聞いてもヴァネッサは『パンか野菜』しか口にしないのだ。
ヴァネッサの世話を任せていたレイやセリーナも彼女の悲惨な現状を憂いながらよく涙を流していた。
頭に浮かぶのは同じ人として扱われていなかったのではないかという事実。
ギルベルトはティンナール伯爵たちに激しい怒りを感じていた。
ヴァネッサがどんな目にあってきたのか簡単に想像できる。

（詳しい調査を行いたいが……いや、まだやめておこう）