【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
それも自分が怒鳴ってしまったため聞けないままだ。

(ヴァネッサとどんな会話をしたのだろうか)

それからアンリエッタは約束を守り、ヴァネッサの元に近づくことはない。
だけどアンリエッタに対する態度を反省してしまう。

体調が落ち着いたのはよかったが、ヴァネッサは今度は違う意味でギルベルトを困らせることになる。
なんと屋敷の仕事を手伝いたいと言い出したのだ。
ティンナール伯爵家でも令嬢としてではなく、彼女を使用人として扱っていたらしい。

(あんな体の状態で働かせるなど……ありえない)

激しい怒りが込み上げてくる。
ヴァネッサと結婚した以上、ギルベルトは彼女の気持ちを優先しつつ責任をとるつもりだった。

刷り込みのように働こうとするヴァネッサを止めるために、公爵夫人で妻であることを説明する。
するとヴァネッサは意外にも何も知識がないことを気にしているようだった。
だが、ヴァネッサに必要なのは知識などではなく時間と休息だ。
そのことをヴァネッサはわかってくれたのだろう。

あんなにギルベルトを拒絶していたように見えたヴァネッサだったが、意外にも結婚にも前向きのように思えた。
セリーナもギルベルトのことを知りたがったり、アンリエッタの心配をしてくれていたと聞いた。

何かが変わっていく……ギルベルトはそんな予感を覚えた。


(ギルベルトside end)
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