【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
──ヴァネッサがシュリーズ公爵邸に来て、一カ月が経とうとしていた。
ヴァネッサは天気がいい日の午後は毎日、アンリエッタが待つガゼボへと向かった。
そこで少しずつアンリエッタにマナーを教わっていた。
カップの持ち方、お茶の飲み方、挨拶のやり方など、ヴァネッサがまったくわからなくてもアンリエッタは根気強くわかりやすく教えてくれる。
ここで知識として得ていたマナーだけでは、まったく違うのだと初めて知ることになった。
「そうそう! ヴァネッサ、とてもうまいわよ!」
合格をもらったヴァネッサはカップをソーサーの上に置いて肩を落とした。
「はぁ……なんだか一つ一つの動きがとても大変よね。うまくできないわ」
「仕方ないわ。慣れよ慣れ!」
「これにコルセットをすると思うともう……」
「それも慣れよ! それに淑女にコルセットは必須だもの」
ヴァネッサはため息を吐きながら席に戻る。
アンリエッタは歳下ではあるが話していると、あまり歳が変わらないように聞こえてしまうだろう。
ヴァネッサが世間知らずなこともあるが、アンリエッタは大人びている。