愛おしい、君との週末配信✩.*˚【BL】
リビングに入ると、見覚えのあるものが窓の前にある棚に飾ってあった。高級そうな瓶の中に水色の大きめなビーズが入っている。

「これ、僕のビーズ?」
「……そうだよ」

 ビーズで妹たちにブレスレットを作っていた時期、たしか永瀬の家に来た日辺りだったか……今目の前にあるビーズをなくした。学校か家にあると思っていたのに。しかも何故か代わりに鉄分のサプリが鞄の中に入っていた。

「返せよ」
「返して欲しい?」
「当たり前だろ、僕のなんだから。というか何故飾ってあるんだ?」
「光に当てると透き通って、羽月みたいに綺麗な色だったから……」

 余裕のある感じに微笑み、顔を近くに寄せてくる。僕の心臓の音が大きく鳴る。顔が熱くなった。

「照れた? 好きな人にこんなセリフ言われたらドキっとしちゃうかな?」
「いや、好きじゃないし」
「だって、写真集買ってくれていたし……というか、会場にいた時も思っていたけれど、その格好暑くない?」

 永瀬の言葉で、はっとした。
 そういえば、正体バレないようにしていたのに……。

「僕の正体、会場でもバレてたのか?」
「うん、すぐに分かったよ」
「じゃあ、隠す意味なかったじゃん」

 そういえばまだ装着していたなと思い、帽子もマスクもサングラスも外した。

「なんで分かった?」
「声もだけど……いつも可愛いなって、見ていたから。っていうか、顔赤いけど大丈夫?」
「別に永瀬にドキっとしたからじゃないからな! 暑いからだ!」

 このままでは永瀬のペースに呑み込まれてしまう。いつも余裕なその感じ、なんかムッとするな。僕は慌てて風花たちのいるキッチンへ向かおうとした。すると風花がお菓子が入っていると思われる紙袋を持ってリビングに来た。

「こっちだけ何かを一方的にもらうのか。借りを作るのは嫌だ。だから僕たちのケーキをもらってくれ」

 僕の言葉に反応して切なそうな顔になる風花。

「いや、俺はいいよ。俺のイベントに来てくれたんだし、そのお礼ということで。買ったケーキは羽月の家で食べな」と、一瞬風花をチラ見した永瀬は言った。

 風花は微笑むと、あらためて室内を見回す。

「ここ、かけるんの動画で見たことある場所だ」
「そうだよ。よく覚えてくれていたね」
「だって、何回もかけるんの動画見てるもん」

 永瀬は自分を宣伝するために数少ないがひとりで動画をアップしていた。その動画を隅々本当にしつこいくらい風花は観ていた。

「風花ちゃんは俺の動画見るの好き?」
「うん、大好き」
「そっか。ありがとう」

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