愛おしい、君との週末配信✩.*˚【BL】
黒いマスクに深く被った黒いキャップ、それに伊達メガネも装着済みだ。大丈夫、きっと僕だってバレはしない。そして遂に、風花の番が来た。

 風花は永瀬の前に立った。

「今日は来てくれて、ありがとう」
「わっ、かけるんに話しかけられた!」

 永瀬は完璧なイケメン笑顔で風花を見つめ、ふたりはなんだか良い雰囲気だ。こうした場所でふたりが会ってしまうことになるとは――。実際このような風景を目の当たりにしてしまうとムッとするけれど、風花の嬉しそうな姿を見ると連れてこれて良かったなという気持ちもある。複雑な兄の心。

 永瀬翔は風花に写真集を渡した。

「はい、どうぞ」
「……ありがとう、だ、大事にする!」
「そう言ってくれて、うれしい!」
「かけるんのぬいぐるみも、持ってる。す、すごく大事にしてるよ!」
「俺のぬいぐるみ大事にしてくれてるんだ、ありがとう」

 普段人見知りせずはっきり言葉を話す風花だけど今日はよそよそしい。がんばれと応援したくなる雰囲気だ。

 そして続けてツーショットチェキを撮るらしい。

「かけるん、一緒に、ハート、手で作りたい」
「うん、分かった」

 永瀬翔は身長を風花に合わせるために少ししゃがんだ。そしてふたりはそれぞれハートの半分となる形を手で作る。ふたりの手を合わせるとひとつのハートが完成した。

 こういうイベントは初めてだ。どんな感じなのか、終始無言なのかなと思っていた。けれど風花は永瀬翔と想像以上に会話ができていて、チェキのポーズまでもリクエストできている。

 眺めているとふたりは手を振りあった。交流の終わりの合図。風花は緊張した様子で、永瀬翔は見守るような優しい表情をしている。風花は永瀬がいる場所から離れると、僕を待つために見えるところの壁に背をつけて立った。目が合うと緊張の糸がほぐれたように柔らかく笑う風花。相手が永瀬なのは微妙だけど、風花にとっては良き思い出となりそうな雰囲気なので良かったと思っておこう。

 風花が楽しそうでよかったなとほっとしたのもつかの間、次は自分が永瀬と交流する番だ。

< 7 / 52 >

この作品をシェア

pagetop