罪深く、私を奪って。
私の部屋の前あたりで、突然音が途切れた。
まさか……。
考えたくないことを、勝手に想像してしまう。
自分の脳に浮かんだ映像に、ぞくりと寒気が走った。
誰かが私の部屋のドアの前で立ち止まっている。
息を殺して、部屋の中の様子を窺ってる。
それは恐ろしい想像だった。
そんな事ない。
きっと気のせいだ。
ドアを開く音が聞こえなかっただけで、もう足音の主は通路なんかにいないよ。
こんな寒い真夜中に、ただドアの前に立ってるなんて、そんなストーカーみたいな事……
必死にそう自分に言い聞かせてみても、寒気は治まらなかった。
全身に鳥肌が立ち、鼓動が早まる。
このまま布団をかぶって、耳を塞いで寝てしまおう。
そうすれば目が覚めた時には朝になってる。
それに、ドアにはしっかり鍵をかけてるんだから。
何も怖がることなんてない。
大丈夫。
……大丈夫。
そう繰り返し自分に言い聞かせても、勝手に全神経がドアの方に向いてしまう。
息を殺して、そこにいる存在を感じ取ろうとしてしまう。
なんとか自分を落ち着かせようと、大きく鼓動を繰り返す心臓の前できつく両手を握りしめ、ゆっくりと息を吐き出した。
その時。
ジャリ、と靴底が擦れる音が微かに聞こえた。
「…………ッ!!」
いる……!
確かに、そこにいる。
誰かが私の部屋の前に……!
今にも叫びだしたくなる衝動を、両手で口を押えなんとか堪える。
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