罪深く、私を奪って。
「悪い、亜紀の荷物持ってくれるか?」
ぼんやりしていた私に、少し苛立ったような低い声。
「……あ、はい!」
私は慌てて自分の荷物をまとめ、亜紀さんのバッグを持って椅子から立ち上がった。
そんな私を待たずに、石井さんは酔っぱらって熟睡してしまった亜紀さんを腕に抱えて、さっさと店を後にする。
ちょっと、歩くの早ッ……!
背が高くて、足が長いから?
それにしても、ちょっとくらい待ってくれたっていいのに。
急いで彼を追いかけて店を出ると、店の前の歩道にタイヤの大きな黒い車が停まっていた。
「悪い、両手ふさがってるから車の後ろのドア開けてくんない?」
「は、はい……!」
彼の低く威圧的な声に少しびくびくしながら、後部座席のドアを開けた。
石井さんは、開いたドアから爆睡中の亜紀さんの体を乱暴に後ろのシートへと放り込む。
車のシートの上に投げ出された亜紀さんは、「うーん……」と、一瞬眉をひそめたけれどまたすぐに寝息を立て始めた。
なんだかすごく慣れてるなぁ。
石井さんも、亜紀さんも。
いつもこうやって、酔っぱらった亜紀さんの面倒をみてあげてるんだろうな。
「あの、じゃあ、私はここで……」
そう言って、石井さんに頭を下げようとすると、石井さんは乱暴に助手席のドアを開けた。
「乗って」と、私を見下ろして低い声で言う。
「え?」
「送ってくから、さっさと乗れよ」
「あ、あの……」
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