罪深く、私を奪って。
いくら亜紀さんの彼氏だからって、あなたにおごってもらう筋合いなんてない。
「じゃあ、次はおごって」
大きな彼の手が、お札を握った私の手をゆっくりと下ろさせる。
「は……?」
「今日俺が出した代わりに、次はあんたが払ってくれればいい」
ぽかんとした私に彼はそれでいいだろ、というように小さく顔を傾けた。
次は、って……。
今度一緒にご飯を食べるってこと?
なんで私が石井さんと……。
いや、ふたりっきりなわけない。
亜紀さんと三人でってこと、だよね。
そんなふうに言われて、嫌ですなんて言えるはずもなく。
私はしぶしぶ掴んだお札をお財布に戻し、無言でうなずいた。
まだ不満げな私に、彼は綺麗な口角を微かに上げて小さく笑う。
その表情がやっぱりひどく魅力的で、勝手に早くなる自分の鼓動がすごく、悔しかった。


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