罪深く、私を奪って。
「返す言葉を考えてるうちに、話が進んじゃって流されちゃってるんじゃない？」
……そう、なのかな？
そうかもって素直に頷いてしまうには、あまりにも自分に甘すぎる解釈だと思うけど。
でも、永瀬さんの優しい言葉は正直嬉しかった。
「ってわけで。俺の家にする？　詩織ちゃんの家にする？」
ホッと気を許したと思ったら、永瀬さんはすぐに女の子を口説くモードに切り替わる。
思わず眉間にシワがよった。
「永瀬さん！　私せっかく永瀬さんの言葉が嬉しかったのに！」
「はは。冗談だよ。でも落ち込んだ顔してるより、そうやって怒ってる方がずっといいじゃん」
……まったく。
永瀬さんは絶対曲者だ。
気を抜くとすぐにからかわれる。
「じゃあ詩織ちゃんの笑顔も見れたし、俺は仕事に戻るかな」
そう言いながら一度伸びをして、歩き出した永瀬さんの背中に向かって、
「永瀬さん、お仕事中なのにありがとうございました！」
慌ててお礼を言った。
「俺でよければいつでも話聞くよ。いつでも詩織ちゃんが俺の部屋に泊まれるように掃除しとくから」
「……！」
私が怒って反論する前に、永瀬さんはさっさと休憩室を後にする。
本当にもう。
永瀬さんと話してると力が抜ける。
でも、おかげでなんだか気持ちが軽くなった気がした。



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