罪深く、私を奪って。
いや、私は思いきり置いてきぼりだから、会話というより永瀬さんの独り言に近いんだけど。
思わぬ展開へと進んでいく話に、どこでストップをかけていいのかわからずに冷や汗が浮かびはじめた時。
「……なんてね」
「は?」
慌てる私の顔を見て、にっこりと永瀬さんが笑った。
もしかして、またからかわれた?
もう、勘弁してよ。
無駄に焦っちゃったじゃない。
「本当に詩織ちゃんは押しに弱いなぁ」
クスクスと笑いながら、永瀬さんは立ち上がった。
「その優しさにつけこんで、悪い男が寄ってこないか心配だよ」
「……別に私、優しくなんてないです。ただ優柔不断なだけで」
「優柔不断?」
「小さい頃からそうなんです。自分の気持ちをはっきり言えなくて、黙ってばっかりで。この前も、私の優柔不断な所がイライラするって言われちゃって……」
何度も繰り返し思い出す石井さんの苛立った声。
私、そんなに人をイライラさせているのかな。
思い出すたびにこんな自分が嫌になる。
「ふーん。それって男に?」
「…………」
石井さんに言われたなんて、とても言えなくて。
私は黙って俯いた。
「困った男だね」
永瀬さんは私の頭をぽんと軽く叩いて、からかうようにそう言った。
「俺には詩織ちゃんは優柔不断っていうより、相手を傷つけないように、一生懸命言葉を選んでるように見えるけど」
「……?」
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