Mutter

N.Y.州立病院

僕は泣き叫んでいた

と
思う

上手くは思い出せない
何か考えようとすると
痛みで覚束(おぼつか)ない

僕の記憶喪失のせいで(詳しくはベトナム戦争後遺症による記憶障害と健忘症)
フィアンセも立ち去って行った



耽美的な記憶喪失モノの創作なんかに触れると
本当に甘っちょろくて
嫌気が差した

それでも僕は
甘っちょろさを求めて
日本を目指した

日本語と中国語を、同時に勉強して
日本の大学を受験し直した

勉強は楽しいとすら思える
思える　今が辛い

でも
辛い
そう思って良いような
平和な今と
辛い
そう口に出しても大丈夫な
今に
感謝します

神様
神様
あの時は居なかったよね

皮肉を言うよ

僕は

言いたく無い事が
たった一つ
｜｜｜
もう二度とその言葉を口にしない代わりに
この世界からそれを失くして下さい

合掌

最近は、日本の仏教の考え方も勉強している
勉強している
勉強出来る
しかし既に
どこすらも痛みを感じずに勉強出来ていた若い頃とは違って
っていけないいけない
考えがまたそっちの方に

何故
僕は生きているんだろう
何故
僕は生かされているんだろう
生かされ…


生きたかった
生きたかった
私達も

見てはいけない
考えてはいけない

有ってはならない！

それは言ってはならない

何故かを考えてはならない

何故！？

それを考えてはならない

…

夜が恐いか！

未だに

一人が恐いか！

未だに

誰も助けに来ないとすれば！


はあ　はあ　はあ　はあ
嫌だ
嫌だ
嫌だ

好き、ミエルの事が、一番好き

好き　嫌い　好き


何も見たくない

前を向け！

何も考えるな！

そして
殺れ！　一早く！
全ての鉄則を教える
一秒でも早く殺った方の勝ちだ
限り無く生き延びる為にな

はあ　はあ　はあ

いつか
いつかこの言葉を
この固定観念を
覆して欲しい

許して
許しておくれ

もう
僕なんかに　人を愛する資格なんて無いんです

たった一度だけ
そういう
恋愛映画にあるようなセリフを言った

僕の何か心のようなものは全て
全てそこに
置いて来てしまったかのよう
心のような

心
心だった

生きたかった
生きたかった
私達も

生き…

日本の大学での勉強や生活も順調で
あたかも何も起こら無かったかのような
日本人の友達に御礼を言いたい

生きたかった
生きたかった
私達も

無かった…
「事には出来ないよな」

不意に訪れる日常のキック

「やだー、ひろし」
「ふふばっかじゃねぇの？」
「あー、お前達、明後日の追試」
「きゃははは」

孤独が恐い
本当は
孤独

この国には
幸いな事に
本当の孤独は存在しません

本当の孤独…

この国には
幸いな事に
本当の孤独は存在しません

本当の孤独？

何をもってしても
癒えなかった

この国に
本当の孤独は存在しません

何によっても



どんな些細な日常も
どんな些細な嫌な事も
僕を癒やさなかった

僕を、
泣けない
泣く事が出来ない
通り一遍のよくある感動話

泣けない
泣く事が出来ない
決して

不意に
何もかも

ごめんなさい

天使
もし
忌む
のかな？

生きていて