悪役令嬢と誤解され王子から婚約破棄を言い渡されましたが私にどうしろというのでしょう?
「ジェリーナ様みたいな人が、私のような女を『あざとい』って思うんでしょうね。
でも、好きな人には喜んでほしいと思いません?
少しでも癒してあげたいって思いませんか?
いつも笑顔でいたいって思いませんか?
自分だって、好きな人の笑顔を見たいと思いませんか?
そのための努力なのに、『媚びてる』とか『あざとい』とか言ってる人って何なんでしょうね」

好かれる努力をしなくても、周囲からチヤホヤされてきた人の発想だ。
ド真面目女は生まれた時から高貴な立場で、何年も前にアホ王子と婚約して将来の王妃確定だったんだから、ずっと気遣いされながら丁寧に扱われてきたんだろう。
アホ王子もそうだけど、こういう立場になると、人に対する当然の思いやりや親切が点数稼ぎに見えてしまうんだろうか。
常に周囲から大切にされて、感覚が麻痺して自分が特権階級だという前提まで忘れてしまうんだろうか。

「わ、私、一言もあざといなんて言っていませんわ」

あ、うろたえてる。

「でも、心で思ってましたよね?」

「思ってもいませんわ。
それよりも、やっぱりあなた自らアルに近づいていたってこと、白状されましたね?
そうやって、アルに近づいたんですね?」

え?なんでそうなるの?

「違います」

「今、あなたが自ら『好きな人の笑顔を見たい』っておっしゃったではないですか」

あ…!しまった!
頭に血が上り過ぎて、口を滑らせてしまった…。

「好きな人は、アルノート様じゃないです…」

どうにか言い逃れないと…。
どうしようどうしよう…。
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