Roadside moon










「…待って」





「うん?」





「サヨちんまさか、返事したの…?」





「してないよ。気長に待つって言ってたし。すぐに決められるものでもないでしょ」





「……そっか」





様子がおかしい。





「…えなに、なんかまずいの?」





「…サヨちんさ」





「なに?」





「…そういうことなの?」





「え、なにどういうこと?そういうことって?」





「好きなの?龍くんのこと」





「………え?」





なんで?










なんだこれと、首を捻る。





おざなりなトーンで私に訊ねた彼女の顔が
心做しか少しだけ赤く。





「……は?」





さっぱり。内容が見えない。





(…私がロンさんを好き?)





どうしてそうなるのだろう。頭の中で何度も何度も脈絡をなぞるが、どうしてもその答えには辿り着きそうにない。





私が、あの人を“好き”だという答えに。





「ま、待ってなんでそうなるの?」





身の程は弁えているつもりでいる。





私がいくら馬鹿だったとして、頭が悪かったとして。





あそこまで明らかに普遍ではない人に、自身の乙女心が反応するものなのか、どうなのか。





なんで?ともう一度尋ねると





綺世はゆっくりと話し出した。















「……朧に来ないかって、言ったんだよね。龍くん。サヨちんに」





「…うん」





「それってさ、いやもちろん、色んな可能性があるんだけど」





「……うん、」





「“俺の女にならないか”的なものの、可能性も、あって…」





「……え?」





揺れる綺世の声が弱々しく脳内を反芻する。













『俺のものに』





『“俺のものにならないか”』









青く、甘くて、淡いのかもしれない。





けれど。





きっと





少し違う。









< 102 / 125 >

この作品をシェア

pagetop