Roadside moon
「ふたりともコーヒーでいい?」
奥の方の席へ通される。
お冷を運ぶ細長い指先をぼうっと目で追っていると、頭上で軽く笑いを含んだ結さんの声が響いた。
「うん」
「小夜ちゃんも?」
「あ、はい、あ、ミルクもください」
「はいはーい…で、拉致は良くないだろ。龍」
「失礼な、任意だよ」
ね?サヨちゃん
柔らかい笑顔が二つ私の視界に飛び込んで。
上がりっぱなしだった肩がストンと落ちて
全身の力がフッと抜けた。
私を覗く美男子二人。
なんとなく笑ってみせた。気恥ずかしくて。
「…」
私は考える。
少し前の自分なら、この状況をどう思うだろう。
中途半端にレースを続けるか。
それとも彼らに出会うか
選べと言われたら。
私は、どちらかを選ぶことが出来ただろうか。
「じゃあ、ごゆっくり」
「はあい」
爽やかに言う結さんに、ロンさんはやけに間延びた返事を返す。
結さんは小さく笑って
その手が、不意に私に触れた。
「わ、」
「ごゆっくり」
頭、整髪料でベタベタしてないかな、とか
汗臭くないかな、とか
頭頂部をそっと伝った結さんの熱に、私の脳はフル回転する。
結さんからは
優しくて甘い、それでいて少しだけ強引な
大人の男性の香りがした。
「…サヨちゃん、」
「…はい?」
「結が気になる?」
「…え、へっ」
「…図星か」
「え、ちがっ、な、っなに」
「ふうん…」
「な、なんですかその顔!」