Roadside moon










「てことで、仲良くしてやってね」





「…誰がこんなのと」





「お前は友達いないんだから」





「は?いるし、友達くらい」





「…いないんだ……」





「普通に友達の一人や二人、」





「へえ…」





「やめろ」





「じゃあ私が、ヨウちゃんの、友達一号になってあげても、」





「やめろ!」





鋭い視線を受け取る。
耳まで染まったヨウちゃんが、トースト片手に私を睨みつける。





意外と顔通りの可愛い人なのかもしれない。





そう、密かに考えを改めたとき。





彼の纏う空気が一瞬、ひどく冷たいものに変わったことに気が付いた。









「…わけわかんねえよ、なんでお前こんなの拾って来たんだよ」





「ヨウ」





「ロンお前、何考えてんの」





発する言葉が不穏に揺れていた。





静かな停滞に、ふと、指先が硬直するのを感じる。





「大体さ」





「…」





「…コイツはお前の何だよ。女此処に連れ込むとかシラケるからやめろっつったのお前でしょ」





「だから、この子はそういうんじゃなくて」





「…だから、お前のその、さっき言ってたチーム入れる、とかが本気なら、尚更キモいんだっつってんだよ」





「…」





――アンタも、





「アンタみたいのがここでやってけるわけねーんだから。さっさと出てけよ」





ひどく冷たい声だった。





笑えるほど歓迎されていない。





何も返せない。





自分が、馬鹿みたいだ。









「…謝れ」





凍り付いた空気を、低い声が切り裂く。





「…は?なんで俺が」





「お前が悪いから」





「…」





「発言、態度。全部だよ」





「…っだから、俺はこんな女連れて来て何になんだよっつってんだよ!おかしいのお前だろ!」





「…それと」





一度、唇を結ぶ。
緩んだロンさんの口元に、小さな笑みが浮かぶ。













「――立場、弁えて喋んなよ。羊」





へらへらと笑っている、あのロンさんもロンさんに変わりはないが。





裏世界の内側から見たロンさんは、きっとこんな風なんだろうなとなんとなく思う。





食パンの欠片を飲み込んで





彼は、ねえ、とヨウちゃんにまた問いかける。





「…っ」





あっさり彼を黙らせてしまったところを見るに、やはりこのロンさんという人は、この組織における絶対的な最高権力者らしい。





ヨウちゃんはそれから何も言わなくなった。





黙ったまま、項垂れてしばらく、





「頭冷やしてくる」と





ぽつり、呟いて部屋を出て行った。





そんなヨウちゃんが気がかりだったというのは本当で





けれどそれ以上に、ロンさんが心配だったというのも本当で。





なんとなく、私はそのままパンを食べ続けていた。








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