女(聖女)だからって受けって誰が決めたの!?

トラウマ

 昔から不思議だった。

 女の子が好きな少女漫画やアニメや小説に出てくるヒーロー。

 色んなタイプがいたけど…どのヒーローもしっくりこなくて、可愛がられているヒロインを見ると背中が嫌悪感でゾワゾワした。

 けれど、年齢が進むにつれて自分が何にときめいてドキドキするのかわかってきた。

 男の人の泣き顔や照れ顔、恥ずかしそうにしてる顔なんかは特に自分の性癖をくすぐった。

 逆に嫌だったのは肩を抱かれたり、甘い言葉を囁かれたり、一時期流行った壁ドンとかは特に苦手だった。顔が強張り、露骨に嫌な顔をしてしまう。

 そんな私でも高校最後の三年の時、初恋を経験した。


「なぁなぁ、お前、三組の日向いのりと付き合ったって本当か?」


 そう言われているのは私の初恋の相手で同い年の三浦薫。女の子みたいな名前だが、サッカー部の部長でゴリゴリのスポーツ少年だ。

 多数の男友達に私の事を聞かれ、顔を真っ赤にしてオロオロしている姿を廊下から見かけて全身がゾクッと逆立つような感覚になった。

 あぁ、本当に可愛い…。


「ほ、本当…」

「マジ!?すっげー!!あんな美人と俺も付き合いてぇー!!」


 自分の容姿が少し人より良かった事を嬉しいと思ったのはこの時が初めてだった。これが承認欲求なのだろうかなどと感慨深かった。


「で、ヤッたのか??」


 ニヤニヤと肘で薫をつつく友達に下世話な奴だなとさっきまでの高揚感がスッと下がる感覚がする。


「…まだ…だけど、途中までなら」

「おぉ!やっぱりさぁ、あの見た目だし、恥じらいつつ甘えてくる感じか?」


 恥ずかしそうに彼は俯いた後、私は初めての失恋をした。いや、勝手に失恋にした。


「いのりは…なんか変で気持ち悪い。普通さ、男リードするもんじゃねぇの、こういうのって…」


 胸が張り裂けそうで胃から酸がせりあがってくる感触があり、息がうまく吸えなかった。
 それと同時に、気持ち悪いと愛しい人に言われるのはこんなに苦しいのかと涙が出た。


「お前、ひっど!あんな美人に迫られたら俺は攻められようが攻めようがどっちでもいいけど」

「でも、意外だな。実は淫乱だったりするのかもなー」


 それ以上聞いているのが辛くなり、放課後一緒に帰ろうと約束していたが何も考えず家に帰った。
 しばらくしてからスマホがけたたましくなっていたが充電していなかったのですぐに静かになり、聞こえるのは自分の嗚咽だった。

 それから、卒業まで近かったのもあり私は学校に行かなくなった。家を教えていなかったのは本当に良かったと思う。もうあの苦しい思いをしなくて済むし、未だに彼の顔を見れない自分がいたから。

 さようなら、気持ち悪くてごめんね。と最後の連絡して、それから彼に会うことはなくなった。

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