ギャップドル!! - だって「素直」になりたくない -

「向いてるとは思わないけどね」
「そのくらいのテンションでちょうど良いと思うぞ。芸能界でしか生きられないとか執着し始めたら終わりだ」

ある夜、
私はパックをしながら大学の勉強をし、姐さんは脚上げをしながら本を読み、オレンジはライブのセットリストをチェックしながら延々と「外郎売（ういろううり）」の練習をしていた。アナウンサーや舞台俳優、声優さんたちが使う言葉のマニュアルだ。滑舌を良くし、アクセントを直し、自然に話せるようになるマニュアル。オレンジが高い声や中間、低い声で外郎売を読み上げるのは、ヒーリングミュージックのようで耳に心地よい。ちなみに青ちゃんはまだ仕事。もう朝の4時なのに。

「あんたは芸能界に執着ないの?」
「まだいたいとは思ってる。でもこれは運だからな」
「努力に裏打ちされた運よー」
オレンジの言葉を姐さんがゆるーく補足する。
「今、芸能界に入らなくても芸能活動できるからな」
「インターネットがあるもの」
「正直、テレビに出続ける意義を考えてる。もっと多様なプラットフォームに挑戦したい」
「でも、私たち、事務所のあやつり人形だから」