榛名三兄弟は、学園の王子様(🚺)をお姫様にしたいみたいです。【マンガシナリオ】

第六話 王子様、脱出する



〇放課後・教室にて
(第五話の続き)

叶羽「あれ、りっちゃんは?」
千紘「りっちゃんなら、授業が終わってすぐ、用があるって言ってどこかに行っちゃったけど……」

授業が終わってすぐ、先生に呼ばれていた叶羽は、席に戻ると凛子の姿がないことに気づいて首を傾げる。千紘の言葉に、叶羽は神妙な面持ちで考え込む。

政宗「何だよ。何かあったわけ?」
叶羽「いや、ちょっと気になることがあって……」

叶羽が口を開いたところで、凛子を用具室に閉じ込めた別クラスの女子生徒三人がやってくる。

女子生徒1「榛名くんたち! ねぇ、よかったら一緒に帰らない?」
叶羽「えーっと……君たち、誰だっけ?」
女子生徒2「え~、ひどくない? 自己紹介するの、これで三回目だよぉ?」
叶羽「そうだっけ? 興味ないことってすぐに忘れちゃうんだよね」
女子生徒3「もう、叶羽くんってば意地悪ばっかり言うんだからぁ」

媚びるような甘い声できゃっきゃっしている女子生徒たちに、叶羽は笑顔を作ってはいるが、その目は全く笑ってはいない。

政宗「あー、ワリィけど、オレら今忙しいから」
女子生徒2「えー、何か用事でもあるの?」
政宗「オレらのお姫様がいなくなっちまってさ。捜しにいくところ」

政宗の言葉に、女子生徒三人は不満そうな顔で眉をしかめる。

女子生徒3「……もしかしてそれって、藍沢さんのこと?」
政宗「あぁ、そうだけど」

女子生徒三人は顔を見合わせてから、クスクスと嘲笑する。

千紘「……あんたら、何がおかしいわけ?」

千紘は苛立ちを隠そうともせずに尋ねる。

女子生徒1「えー、だって……ねぇ?」
女子生徒2「わたしたち、さっき藍沢さんに会ったんだけどね」
叶羽「りっちゃんに? どこで会ったの?」
女子生徒3「校舎裏のあたりにいたよ。だから、どうしてこんな所にいるのって聞いたら、榛名くんたちから逃げてきたって言ってたの」
女子生徒2「藍沢さんってば、ひどくない? 榛名くんたちが優しくしてくれるからって調子にのっちゃってさぁ」
女子生徒3「さっきも、榛名くんたちの悪口ばっかり言ってたんだよ? もう心配してあげるだけムダだって」
女子生徒1「そうそう。あんな子は放っておいて、わたしたちと一緒に放課後デートしよう? 近くに可愛いカフェがあるんだけど……」
叶羽「ねぇ、さっきからうるさいんだけど。黙ってくれる?」

女子生徒の言葉を遮った叶羽は、笑顔を消し去って、無表情の冷たい目で女子生徒たちを見遣る。

叶羽「君たちに、りっちゃんの何がわかるわけ?」
女子生徒1「え、叶羽くんってば、そんなに怒らなくても……」
叶羽「っていうか、名前で呼ぶのもやめてもらってもいいかな。不快だから」
千紘「叶羽、もう行こ。そんな奴らと話してる時間がもったいないし」
政宗「とりあえず校舎裏の方に行ってみるか」

榛名三兄弟は、呆然としている女子生徒を置いて教室を飛び出る。
そして校舎裏の方まできたところで、後ろから声を掛けられる。

凛子「皆、そんなに慌ててどうしたの?」
叶羽「いや、実はりっちゃんが……って、りっちゃん!?」

今まさに捜していた凛子がそこにいて、三人は驚く。
凛子はボロボロの姿。

千紘「りっちゃん、何でそんなにボロボロなわけ? もしかして、あいつらに何かされたんじゃ……」

千紘たちは怖い顔をして尋ねる。

凛子「え? ……あぁ、実は運悪く用具室に閉じ込められちゃってさ。だから、自力で脱出したの」
政宗「用具室に? ……一応聞くけど、どうやって自力で脱出したわけ?」
凛子「どうやってって……あそこの小窓から、飛び降りて」

凛子は、背後にある用具室の方を指さす。
榛名三兄弟は視線を用具室の方に向ける。小窓があるが、高さ的に三メートル近くある。

政宗「はぁ!? りっちゃん、あの窓から飛び降りたわけ!?」
叶羽「どこか怪我してない……!?」

心配そうにしている三人に、凛子はうなずいてピースサインを作る。

凛子「全然平気。それよりもわたし、今から行かなきゃいけないところがあるからさ。ごめんね」

凛子は行ってしまう。
その後ろ姿を呆然と見ていた三人は、ハッとしてすぐに凛子の後を追いかける。


〇放課後・教室にて

女子生徒1「はぁ、マジでサイアク。叶羽くんたち、めちゃくちゃ怒ってたし……」
女子生徒2「大体、あんたが藍沢さんにちょっと痛い目みせてやろうとか言いだしたのが悪いんじゃん!」
女子生徒1「はぁ? わたしが悪いって言いたいわけ!? あんたたちも賛同してたでしょ!」

凛子を閉じ込めた女子たちが、教室で言い合っている。
そこに凛子が現れる。

女子生徒3「あ、藍沢さん?」
凛子「さっきわたしを閉じ込めたのって、あなたたちだよね?」
女子生徒1「は、はぁ? 何のこと?」
凛子「だって声が一緒だし、今わたしのことを話してたの、廊下まで聞こえてたから」
女子生徒1「っ、……そうよ! あんたが榛名くんたちにちやほやされて調子にのってるから、ちょっと痛い目みせてやろうと思ったのよ!」
女子生徒2「大して可愛いわけでもないくせに、榛名くんたちに優しくしてもらってさ」
女子生徒3「そもそも藍沢さんは、学園の王子様なんでしょ? 榛名くんたちはお姫様とか言ってたけど、そういうキャラじゃないじゃん。勘違いしない方がいいんじゃない?」
女子生徒1「榛名くんたちに相応しくないのよ!」
凛子「……なるほど。つまりあなたたちは、わたしが榛名三兄弟と仲が良いことが気に食わなくて、わたしを用具室に閉じ込めたってことなんだね」

女子生徒たちの話を黙って聞いていた凛子は、三人の目の前まで歩みより、バンッと机に手のひらを置く。女子生徒たちは凛子の圧に、身体をびくりと震わせる。

凛子「だからって、閉じ込めるのはどうかと思う。だって、それであなたたちの納得いかないって気持ちがなくなるわけじゃないよね? 不満とか言いたいことがあるなら、これからは今みたいに直接言ってほしい。話ならいつでも聞くから」
女子生徒たち「「なっ……」」
凛子「あ、それともう一つ。わたしが誰と仲良くするかを、誰かに決められる筋合いはないから。だから、あなたたちがどんな嫌がらせをしてきたとしても、わたしは自分の意思で榛名三兄弟たちと友達でいるかを決めるつもりだよ。――それだけ、伝えておきたかったんだ」

凛子の真っ直ぐな目に射抜かれた女子生徒たちは、反論も出来ずに固まってしまう。
そこに、教室の出入り口の方から声が聞こえてくる。榛名三兄弟は凛子の後を追いかけてきて、凛子と女子生徒のやりとりをばっちり見ている。

叶羽「りっちゃんってさぁ、何でそんなに男前なわけ……?」
千紘「好き」
政宗「ますます惚れ直したわ」

榛名三兄弟の登場に、女子生徒たちは蒼ざめる。

政宗「っていうかさぁ、りっちゃんがオレらに相応しくないとか、どの口が言ってるわけ? ウケ過ぎて最早笑えないんだけど」
千紘「っていうか、りっちゃんが可愛くないとか……おまえら、視力ないの? 早急に眼科にでも行っといたほうがいいんじゃない?」
叶羽「まぁ、とりあえずさ。次またりっちゃんに何かしたら――俺ら、何するかわかんないから。そこのところ、よろしくね」

にっこり笑顔だけど(千紘は無表情で政宗は苛々した顔)、怖いオーラを纏っている榛名三兄弟と対峙した女子生徒たちは、コクコクと頷きながら慌しく教室を立ち去る。

凛子「……あの、わたし汚れてると思うから、あんまり近づかない方がいいと思うよ?」
叶羽「はぁー、りっちゃん大好き。結婚して」
凛子「いや、無理かな」
千紘「じゃあおれがりっちゃんのところに嫁ぐ」
凛子「何がじゃあなの?」
政宗「オレはやっぱり、りっちゃんにはウェディングドレスを着させてやりたいけどな」
叶羽・千紘「「それはそう」」
凛子「あのー、三人とも、わたしの話聞こえてる?」

わちゃわちゃしている四人を、教室の外から誰かが見ている場面で締める。

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