エリート外科医の蕩ける治療
プロローグ
私の体はどこかおかしいのだろうか。
初めてできた彼氏に私の初めてを捧げて、本当にドキドキしてたまらなかったのに、コトが終わって早々にこっぴどくフラレた。

「お前さあ、不感症なんじゃね? 全然濡れないし反応薄いし、つまんねー。あとさぁ、なんか食いもんのにおいする。普通女だったら甘ったるい匂いしねぇ?」

ガツンとハンマーで殴られたような衝撃。そういうこと、知識が浅くて何もできなかったことは認める。だけど彼に言われたことはちゃんと頑張ってみたし、嫌われないように普段からおしゃれも頑張ったはずだった。でもダメだった。ていうか、においって……においって……!

精神的ショックが大きすぎて、何も反論できなかった。

それ以来、ずっとお一人様満喫中。
ていうか、そういうことを避けてきたしそのせいで男性との縁も遠くなっていた。

何ていうか……ずっとトラウマ発動中。

宮越杏子(みやこしあんこ)、二十八歳。アラサー独身彼氏なし。
そんな私が、なぜか今、ラブホテルにいる。

「杏子って、美味しそうな名前」

私を組み敷く目の前の彼は、熱い眼差しで私を見つめながら舌なめずりをする。獰猛な野獣に食べられそうな感覚が少し怖い。それなのに、何かを期待している私もいる。

「美味しいって思ってくれたら願ったり叶ったりなんです。でもたぶん美味しくないかと……」

緊張を隠すために素っ気ない返事をしたのに、意に反して心臓は壊れそうなほどにバクバクと音を立てている。そんな私とは対照的に、彼はニヤリと意地悪く余裕の笑みを見せた。

「試してみたらいいよな。杏子が本当に不感症なのかどうか」

「そうですね。試してみてください。全然濡れなくてガッカリさせちゃうかもしれないですけど」

強がって言ってみたものの、なおのこと心臓がバックンバックンと壊れそうな音を立てている。収まる気配など微塵も感じられない。

これからどうなるのか、怖い。
私が本当に不感症なのかどうか、彼が試してくれるのだから。
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