エリート外科医の蕩ける治療
1.何か治療法ありませんか? side杏子
明るい照明とスタイリッシュな内装のおしゃれな創作居酒屋。楽しそうな話し声がそこかしこに溢れるのに、私はあまり楽しくない。

四対四の合コン。私の前の席は空き。つまり、男性三名、女性四名というわけだ。まあ、最初から人数合わせのために駆り出された合コンだったから、目の前に男の人がいなくても別に何とも思わないけれど。

「ごめんねー、一人遅れてくるからさ。とりあえず俺たちだけで楽しも!」

ノリの良い男性が盛り上げてくれる。男性陣は全員三十歳で高校の同級生だそう。私は適当に相槌を打ちながら、目の前に運ばれてくる料理に興味津々だった。まさに花より団子。どうせ彼らも私には興味ないことはわかっている。

「へぇ、君たちはみんな看護師なんだ」

「そうなの。あ、でも杏子さんは違って」

「え? ああ、私はお弁当屋の店員です」

「へえ〜そうなんだ〜」

ほらね、微妙な顔。別に持ち上げてほしいわけじゃないけれど、なんかこう比較されてる感じが否めない。彼女たちも、それをわかってて私を誘ってるんだと思う。

まあ、いいけど。存分に私を利用して、いい男をゲットしてくださいな。私はその間に美味しいご飯でもいただきますからね。

そうやって過ごしていると、ふいに私の前の席に男性が現れる。背が高くてモデルみたいに長い手足。さらっと流れるような黒髪にすっと通った鼻筋は彼がイケメンであることを証明するかのよう。ざわっと女性陣が色めき立つ。

「ごめん、遅くなった。……って、なに? 合コン?」

「一真《かずま》、遅いぞ」

「ちょっと待て。合コンなんて聞いてな――」

「まあまあ。こいつ、清島一真《きよしまかずま》。俺たちの同級生で、医者。四月からこっちに戻って来るっていうんで、誘ったんだ」

紹介された清島さんは迷惑そうに顔を顰めた。ああ、この人も人数合わせのために呼ばれたのかな。だとしたら、私が断っていれば清島さんもお誘いを受けなくてすんだのに。なんだか申し訳ない。

「わあ、どこの病院なんですか? 私たち看護師やってて」

「え?」

清島さんが私を見るので「あ、私は違います」とすぐに否定した。
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