エリート外科医の蕩ける治療
一真さん、私のこと体目当てじゃないよね……?

と考えたところで、それはないと思い直した。だって私はスタイルが良いわけでも胸が大きいわけでもないし。あの日は治療してもらっただけだし。

「きっと心和ちゃんが魅力的だったのね。心和ちゃんスタイルいいし」

「杏子さん、それは違いますよ。人にはいろいろなフェチがありますし」

「フェチ?」

「ちなみに私は背中が好きです」

「あ、だったら私は喉仏かな」

「なるほど……」

私はどこだろう? 一真さんの引き締まった腕、かっこいいんだよな……。ってダメダメ。思い出すと体が熱くなる。落ち着け落ち着け。

「まあ、未遂だったからよかったじゃない。私なんて彼氏と絶賛ケンカ中だよ」

「えっ、千里ちゃんいつの間に彼氏できたの?」

「いやー、実は前の合コンの時に連絡先交換して、それで付き合い始めたんですけど……もうダメかも」

「待って待って。飲みましょう、千里さん」

「いや、飲むより食べよう」

心和ちゃんと私が千里ちゃんに料理を勧める。「ヤケ食いだー」と千里ちゃんは唐揚げをモグモグ食べ、おかわりのレモンチューハイをぐいっと煽った。

じっと話を聞いていた桜子さんが、頬に手を当てながらコテンと顔をかしげる。

「そう言えばこんな話知ってる? ケンカしたとき、女は話を聞いてもらえれば落ち着くし、男は顔に胸を押しつけてあげたら落ち着くらしいよ」

「えっ、何ですかそれ」

「そういう研究があるんだって。千里ちゃん、それで仲直りできるかやってみて。頭を胸に抱えるのよ」

「桜子さん、それって貧乳でもいけます? 巨乳限定じゃないですよね?」

「それはわからないけど。だから千里ちゃん試してみてよ」

「わー、桜子さんが私を実験台に使うー!」

「心和ちゃんは良い形だよね」

「桜子さん真面目な顔してセクハラ親父みたいなこと言わないでください!」

個室にゲラゲラと笑い声が響く。私はあれこれ食べつつ、楽しくみんなの話を聞いていたんだけど――。

「そうだ、杏子さんって最近恋人できました?」

「げっほっ!」

思わぬ質問に、食べていた唐揚げが喉に絡まった
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