エリート外科医の蕩ける治療
14.だって心配になっちゃった side杏子
一真さんとお付き合いを始めてから、一真さんはお弁当を買いに来てくれることが多くなった。毎日ではないけれど、たまにお昼に会えることが特別感があって嬉しい。夜は夜で、お互い仕事が早く上がれた日なんかは、一真さんのお家で一緒にご飯を食べたりする。

「ああ……幸せ」

「何か美味いものでも食べたのか?」

「はっ、一真さん!」

「唐揚げ弁当で」

「唐揚げばっかりはよくないですよ?」

「じゃあ杏子が選んで」

「……唐揚げで」

「よくないんじゃなかったのか?」

「だって一真さん唐揚げ好きだから、やっぱり好きなもの食べたほうがいいと思って」

「まあ、杏子が作るものは全部美味いから、唐揚げじゃなくてもいいんだけどな。でも好きなんだ、唐揚げ。午後からもやる気出る」

そんなことを言われたら嬉しくてたまらなくなる。恋人特典で一個オマケしておこう。丁寧に袋に入れて、一真さんに手渡す。一真さんはふっと微笑んで「ありがとう」と受け取った。

その笑顔を見られただけで、胸がキュンキュンする。私ったらどれだけ一真さんのことが好きなんだろう。こんな風に人を好きになって、お付き合いするなんて、以前の私では考えられなかった。

「一真さん、今日夜は?」

「何もなければいつも通り」

「私も今日はこっちの仕事だけなの」

「じゃあ終わったら連絡するよ」

「うん、午後からも頑張って」

店の出入口まで見送って小さく手を振ると、一真さんはまたニコッと微笑んでくれる。穏やかで優しい空気が流れているのがわかって、心がぽっとあたたかくなった。

「幸せだなぁ」

幸せすぎてつい声に出てしまう。でも、悪い言葉を言っているより断然いいよね。言葉は言霊っていうし、いい言葉はどんどん言っていこう。そうしたらきっと運気もアップ。どっかの風水師もそうやって言っていた気がするもの。
< 95 / 113 >

この作品をシェア

pagetop