心とりかえっこ
近づいた二人
その後、私はとても体育の授業に出る気になれなくて、佐々木くんのお弁当を持って一人で教室へ戻る。

一気に満タンになった心は、再び一気に空っぽになった。さっき、この廊下を通った時はあんなに幸せな気持ちにだったのに。どうして今は絶望の淵に立たされているんだろう。

ガラッ

教室のドアを開ける。既に体育の授業は始まっているのに、一人の男子が席へ座っていた。

「あー、いたいた。脅迫した人、はっけーん」
「佐々木くん……」

今日も佐々木くんはピアスをキラキラと光らせながら、着崩した制服に身を包んでいた。自分の席だけど足を広げ、存在感が抜群だ。

「……遅刻だよ」

言える立場にないと分かっていたけど、気づいた時には勝手に口が動いていた。何も喋らなければ泣いてしまうと焦ったからだ。

「脅迫するよりマシでしょ」
「……そうかも」

本当に、その通りだ。

私は佐々木くんに近寄り、「はい」とお弁当を渡す。彼は少し気恥しそうに、私を見ないまま「ん」とそれを受け取った。温かなお弁当がなくなって、どんどんと体が冷えていく。覚えたくない喪失感に、急に心細くなった。
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