心とりかえっこ

『それは〝堂々としている〟っていうんだよ』
「堂々……?」
『水野はカッコイイよ』
「!」

今まで自分の気持ちを素直に話すことは、自分にとってマイナスでしかなかった。何を言っても「さすが」とか「言うねぇ」とか「さすがサバ女」とか。だから自分の気持ちに蓋をしてきたんだ。涙だって、皆の前で見せないように。

だけど、自分の気持ちに素直になっていいんだ。それで良かったんだね。

「ありがとう佐々木くん。好きだよ」

ん?
呟いた言葉にハッとして、顔を上げる。涙で潤んだ視界の中に、佐々木くんは立っていた。私と同じくスマホを耳にあてたまま、じっとこちらを見ている。どうしたらいいか分からなくて、ただ私も、彼を見つめ返す。

だって私、今「好き」って言ったよね?
佐々木くん本人に言っちゃったよね?

「あ、あの、あの……っ!」

突然芽生えた気持ちに、自分自身が戸惑ってしまう。

確かに私はどんな佐々木くんもステキだと思うし、おばあちゃん思いなところもカッコイイと思うし、それに、

『水野』
「え?」

まるでアイロンをかけたみたいに、パリッとした声が鼓膜を揺する。私は熱を持ったままの顔を、戸惑いながらゆっくりと上げた。

『何も考えなくていい。何も考えなくていいから――
今から俺に、抱きしめられて』
「え!」

涙でぼやけた視界の向こうで、だんだんと佐々木くんが近づいてくる。大きくなってくる。まるで私の中で芽生えた気持ちと連動するように、徐々に存在感を増していく。そして、

「『水野』」

腕を引かれて、体が傾く。目に溜まった涙は、抱きしめられた衝撃で飛んで行った。クリアになった視界いっぱいに、嬉しそうに笑う佐々木くんの顔が写る。

そして――

「俺も水野が大好きだ」

【完】
< 49 / 49 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

総文字数/138,849

恋愛(逆ハー)398ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
一つの問題をきっかけに 恋のトライアングル、開幕 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ ツンデレな同級生 ▶ 一葉 勇運 (弟) 「俺のこと好きじゃなくていいから、 俺に三石を守らせて」 × とある悩みがある ▷ 三石 冬音 「好きになっても…良いですか?」 × 優しいお巡りさん ▶ 一葉 守人 (兄) 「大人をからかっちゃダメだよ」 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 複雑に交差する「好き」の矢印 その中に混じる、秘密 「俺とだから、キス嫌じゃなかったの?」 「君の手を離したくなかった」 「やっと、幸せを見つけたの」 それぞれの恋の終着点とは―― 表紙公開▶2023/09/10 完結▶2023/11/10
超ポジティブな委員長の桂木くん (短)

総文字数/23,085

青春・友情61ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
不登校の私の家に委員長がやって来た 「なんで学校に来ないのですか?」 「行きたくないんだもん」 「僕がいるのに?」 「……へ?」 初対面で、この発言 実はこの人、超ポジティブ人間だった 「毎日僕を見なくて何が幸せなんですか?」 「同じクラスで僕と同じ空気を吸う、 それは高級エステに通ってると同じですよ」 「僕と一緒に登校しますか? 僕の隣を歩く=あなたの価値は凄いんです」 自己肯定感の塊、それが委員長の桂木くん 最初は「変なヤツ」って思ってたけど… 「僕と手を握れるなんて、 10億の宝くじが当たるより凄いんですよ?」 「……ぷ、なにそれ」 バカな事を大まじめに言う桂木くんを 「学校で見てみたい」なんて… そんな事を思い始めた \委員長のお悩み相談室が開幕!/ 表紙公開▶2023/03/18 執筆開始▶2023/04/07
花屋のガーデニング委員会!

総文字数/63,115

恋愛(逆ハー)20ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
中学一年生の花屋心春(はなやこはる)は 庭でガーデニングする祖父を、 祖母と一緒に眺めるのが日課だった。 しかし祖父は持病が悪化し急死。 ショックから祖母も食欲不振になり入院。 心にぽっかり穴が空いた小春は、 一人寂しく過ごしていた。 ある日、庭で赤いバラを見つけ、 水を与えると… なんとカッコいい男子に変身! 名前は薔薇園空(ばらぞのそら)。 空は、なぜか祖父のことを知っていて、 しかも、 「一緒にガーデニングをしよう」 「大丈夫。俺が教えるから」 と誘ってきて――!? ※二年前、公募するため執筆した作品です 改ページが少ないです。すみません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop