【短】人身売買のオークション会場で消えた恋人を高値で買った。sideノア





「ねぇエラ。何故君がここにいるのかはわからない。だけど君を買ったのは僕だ。君はもう僕だけのものだ」



そしてたった今僕のものになったエラの頬に優しく触れた。
エラに触れた指先からエラの温もりを感じる。
それだけで僕の指先は喜びで震えた。



「会いたかったよ、エラ。もう二度と逃がさないからね」



今度こそ君を美しい花園に閉じ込めてしまおう。
エラは僕に微笑まれて不安げに僕を見つめた。



*****



それから僕はすぐにエラを檻の外に出した。
そしてエラの腰を抱いて、迎えの馬車まで歩き始めた。

僕の隣を歩くエラは終始周りを確認しており、まるでここから逃げ出そうとしているみたいだった。

だが、もう逃すものか。
一度その手を離して5年も君を探し続けた。
エラのいない日々には色が一切なかった。自分が何の為に生きているのかわからなくなった。

エラは僕の全てだ。
もう僕の全てを失うわけにはいかない。

  

「…あの」



おずおずとこちらを伺うようにエラが僕を見つめる。


 
「…ん?」



僕は昔と変わらず優しくそんなエラを見つめ、次の言葉を待った。

 

「さっきオーナーが私の名前はないって言っていたけど本当はあるの、私の名前」



昔とは違う話し方。
僕の知っているエラならこんな砕けた話し方はしない。




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