【短】人身売買のオークション会場で消えた恋人を高値で買った。sideノア
「ええ。よくわかりましたね。ですがこれは誰かからの贈り物ではありませんわ」
僕の感情なんて微塵も知らないエラが僕と同じようにふわりと微笑む。
ああ、やっぱり僕はエラを愛している。
愛おしくて仕方がない。僕のこんな感情なんて知らずに笑う彼女を一生僕だけが見ていたい。
「それはよかった。僕以外の誰かからのものをこれからも身につけたらダメだよ?」
どうかこんな僕の醜い感情に彼女が気付きませんように。
ずっと何も知らないまま笑っていられますように。
そう願いながら僕はまたエラと同じ笑顔を浮かべた。
*****
幸せな時間はあっという間に過ぎていく。
ついに彼女との別れの日がやって来た。
今日エラは隣国へ帰る。
僕は最後の最後まで彼女を目に焼き付けたくて馬車まで彼女を送っていた。
「エラ。あちらに帰国しても毎日手紙を出すよ。週に一回は花束を。二週間に一度はエラに会いに行くから」
「…ありがとうございます、ノア様」
僕は寂しげにエラに笑う。
少しでも、一瞬たりとも僕のことを忘れて欲しくない。
君と少しだけでも離れてしまうことを憂う僕をどうかその目に焼き付けてその胸に刻んで欲しい。
エラも僕と同じように寂しげ笑っている。
エラもきっと僕と離れることが何よりも耐え難いのだろう。