おてんば男爵令嬢は事故で眠っていた間に美貌の公爵様の妻(女避け)になっていたので土下座させたい

変わってしまった日常・セイラ視点

ある日を境にイェルガーが変わってしまった。
隙あるごとに可愛い、キレイ、好きだ、愛しているとか言ってくる。本当に心臓に悪い。
セイラは落ちてなるものかと踏ん張っていた。

「はぁ、しんどい……」

昼間にはイェルガーは仕事でいないので楽だ。
家に帰ってくるとセイラを口説くような行動をとる。頭でも打ったのか。勘違いしそうになる。

「本当の夫婦になる発言あたりからかなぁ、様子がおかしい」

自分から言ったが、軽々しく言うものじゃないなと思った。
相変わらず、表情はないけど言葉攻めがすごい。距離も近い。自分の顔面の威力わかっていない、タチが悪い。

ウソはつくけど、真面目なイェルガーは人前以外でも愛妻家を演じるようになった。寝室でもセイラにベタベタするようになった。

「落ちそうだわ……」

自分だけが好きになるのは嫌だった。先に落ちてなるものかと堪えているのだった。


そろそろ部屋に帰ってくる時間になる。
セイラはそわそわした。
深呼吸して心の中でカウントダウンもする。

(3・2・1)

「セイラ! 今帰ってきたぞ」

イェルガーはセイラの側まで行き、後ろから抱き締めた。

「おかえりなさいませ」

イェルガーが耳元で囁きはじめた。

「セイラ、今日も可愛いな……」

(ひょぇぇぇー!)

耳を甘噛みしだした。

「はうぁ……」
(いやぁぁ! 変な声出た!)
「可愛い」

明日まで心臓がもたないかもしれない。
なんかお腹の辺りが痛い。
羞恥でいたたまれなくなり顔を両手で隠す。

それから肩を手で押して向かい合うようにされた。

「どうした?」
「……恥ずかしさで、死にそう」
「そうかっ」

なぜか楽しそうな「そうか」が返ってきた。

イェルガーがセイラを再び抱き締める。
そのあと、手やら首やら顔に軽いキスされる。
これが数日続いて慣れそうで慣れない。

(「どうした?」は、こっちのセリフだよ!)

十六日目、セイラは羞恥心からイェルガーを目一杯殴ってしまった。
イェルガーがセイラの服のボタンを外しはじめた時、右の拳が顔にクリティカルヒットした。

夫から貞操を守るという訳のわからない状態になった。誰に操をたてているのかさっぱりわからないが、セイラは守り抜いた。

イェルガーの左頬はしばらく腫れていた。
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