『可愛い君へ』
次の日。
花苗が給湯室でコーヒーを入れていると、部長の朝霞が真後ろに立っていた。
突然のことで花苗は驚いた。
「ひゃあ!」
思わずコーヒーをこぼしそうになってしまった。
「申し訳ない。驚かせてしまったか?」
「い、いえ。こちらこそ、大きな声を出してしまってすみません。あ、コーヒー入れましょうか?」
「いや・・・大丈夫だ。その・・・先日はありがとう。」
「いえ・・・こちらこそ・・・ありがとうございました。とても楽しかったです。」
「・・・・・・。」
何か言いたそうにしている朝霞に花苗が首を傾げていると、朝霞が胸ポケットから細長い紙切れを出した。
見るとそれは映画のチケットだった。
最近ネットで感動すると評判の洋画だった。
「実はこれ・・・2枚貰ったんだが一緒に行く相手がいなくてね。もし良かったら・・・君と一緒に行けたらなって思ったんだが・・・どうかな?」
「行きます。」
花苗は食い気味にそう答えた。