隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
何と言えばいいのか、混乱した脳内で言葉を選んでいると、いつもの涼太さんらしくなく、言葉を詰まらせながら頭を下げた。
「だから、お見合いすることになって、ごめん」
頭を大きく殴られたようだった。
「え……?」
「……里香はさ、まだ学生でこの先就職もして色々な経験も出会いもいっぱい待ってる。そのうち俺なんかよりもっと良い人も現れるよ」
申し訳なさそうに目線を下げたまま、苦々しい顔をして私に頭を下げているのだが、何を言っているのか私にはしばらく理解できなかった。
「えと…それは……別れる、っていう…こと?」
涼太さんはゆっくりと、だけど確かに縦に首を動かした。
「……現実に戻らなきゃ、俺も、里香も」
(あぁ……私は涼太さんの”現実”じゃなかったんだ……)
私のことを好きと言ってくれたのも、温かく包み込んでくれた手の優しさも、柔らかい空気を纏った穏やかな笑顔も、涼太さんにとっては、現実じゃなかったんだ。いっときの、ただの、現実から逃げた先の偽りのものだったんだ。
不思議と涙も出なかった。
(……こんな時は、なんて言ったらいいんだろう)
ろくに恋愛もしてきてないから、別れ方だってまともに分からない。最後の最後まで不器用な自分に軽く笑いすら出てきてしまう。
ただ、涼太さんを困らせたくない。ずっと甘えてきたのだから、いっぱい与えてくれたのだから、最後くらい物分かりの良い女を演じたい。
だって好きだったから。私にとっては救いの人だったから。
(見送るしか選択肢はないんだもん)
ぐっと顔に力を入れて、涼太さんを真っ直ぐに見つめる。
「わかった、幸せになってね」
涼太さんはハッとした表情で私の顔を見据えた。思えば、涼太さんと目を合わせることに何の抵抗もなくなっていた。女の子の友達と喋るのと変わらないように、自然体でいられた。
「たくさんの素敵な思い出をありがとう」
最後に精一杯の笑顔を作って、私は席を立った。