【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
 ◇
 

「ついさっき、雑談スペースで女性がお倒れになったのよ。歳はちょうど、わたくしたちと同じくらいの」
「でも、すぐにリアム様が介抱されて。きっとリアム様のいいひと(・・・・)に違いないわ」
「そう言えばあなたの髪色、お倒れになった女性と似ているわね」
「――え、その後? どうかしら。あなたたち、聞いていらして?」
「確か、『休憩室を貸してくれ』って司書に仰っていたわよ」


(――休憩室!)

 女性たちから一部始終を聞いたシオンは、一目散に走り出す。
 階段を一足飛びで駆け降りて、一階の休憩室へと急いだ。

 休憩室は各階フロアの最も奥に設けられているが、エリスが一階で倒れたと言うのなら、使うのは一階にある休憩室に違いない。

 途中、すれ違う司書たちから「館内は走らないで!」と注意されるが、その一切を無視し、シオンは走った。
 その顔を、怒りに赤く染めて。


(『私の連れ』だと……!? ふざけるな……!)

 女性たちの話を聞いたシオンは、ここにリアムがいることが、決して偶然ではないことを確信していた。
 なぜなら、リアムは倒れたエリスを抱き上げるなり、野次馬に向かってこう言ったらしいのだから。

「彼女は私の連れ(・・・・)だ」と。
 それも、恋人や妻でも見るような目つきで。

 つまり、リアムは嘘をついたのだ。
 その場にマリアンヌらしき女性の姿がなかったとの情報からも、リアムがエリスを狙っていたことは明白である。


(あの男、姉さんに何かしてみろ! どんな手を使ってでも殺してやる……!)

 ――リアムのこの行動は、『オリビアをアレクシスの側妃に』という提案を断った腹いせか。
 それとも、もっと別の理由があるのか。

 何にせよ、エリスに何かしたら、ただでは済まさない。
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