【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜


 シオンは休憩室付近の司書を捕まえ、エリスとリアムがどの部屋に入ったのか答えを得ると、急いでそのドアノブを回した。
 けれど鍵がかかっているのか、何度回しても扉は開かない。

 仕方なく、シオンは全力で扉を叩く。

「リアム・ルクレール! ここを開けろ! お前が中にいるのはわかってる! 開けないと蹴破るぞ!」

 だが、どれだけ叫んでも反応はない。

(こうなったら、本当に蹴破るしか――)

 シオンは助走距離を取るべく、扉から数歩後退する。

 すると、その矢先だった。
 鍵の開く音がしたと思ったら、一拍遅れて、扉が開く。

 そうして、中から顔を覗かせた人物に、シオンは大きく目を見張った。
 そこに立っていたのがエリスでもリアムでもなく、オリビアだったからだ。

「……オリビア様? なぜ、あなたが……」

 シオンは、予期せぬオリビアの存在に気を削がれる。
 けれどそれも一瞬のこと。

 次の瞬間には、さぁ――と、顔を青ざめる。


「……姉……さん……?」


 なぜならシオンの視線の向こうにあったのは、ソファの上に力なく横たわる、(エリス)の姿だったのだから。
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