過つは彼の性、許すは我の心 壱
『ねえ、 に い よ』
可愛らしくも、憎らしい声が頭に響く。
白いしなやかな手が、私に伸ばされてーーー。
カキーン!
バットを振るった音が、幻を掻き消した。
どっと身体中から汗が吹き出す。
「どこ飛ばしてんだよ!」
「スンマセン!」
外で練習する野球部員の声が聞こえて、意識がじわじわと現実に戻される。
気づいたら、
「うわしまった…!」
教材が床に散らばっていた。
大慌てで美術教材であるポスター数点の無事を確認する。
「汚れてたりは…ないね」
中身を検分しながら、丁重にくるくるとポスターを巻き直す。
ポスターの内容はジャック=ルイ・ダヴィット【クピドとプシュケー】、グスタフ・クリムト【ダナエ】、アントニオ・アッレグリ・コレッジョ【イオ】etc…。
ギリシア神話メインの神と人の愛の軌跡。
………そういえば、昔から不思議だったんだけど。
と、丸めたポスターを纏めながら、昔からの疑問を思い出す。
人間って、人以外の何か…例えば神様とか、妖精、精霊、動物etc…と何で交わる発想に行き着いたいんだろう。
何か人にとって得になる力を得られるから?
神の親族になることで自身も神様そのものになれるから?
そもそもそういうのって、異類婚姻譚っていうんだっけ。
「よいしょ」
教材を持ち直して、改めて歩き始める。