Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
Barret's Secret バレット家の秘密
どん、と勢いのいい音と共に、オリヴィアの前に灰色の液体の入ったボールが差し出された。
「これは本当に滋養がつくよ! さぁ、たんと召し上がれ!」
マギーは満面の笑顔を浮かべながら丸い背を反らせて、まるでボウルの中身がキラキラ輝く宝石の集まりであるかのように、誇らしげに言った。
オリヴィアはつられて、にこりと微笑み返す。
しかし、目の前に置かれた、この灰色のような茶色のような、奇妙な色をしたどろどろのスープからは、嗅いだことのない生臭い香りが漂っていて──せっかくの微笑も、少し引きつったが。
食堂の中ではなく、調理場のこじんまりとした椅子と机に座らされていたオリヴィアは、すでに生まれてこのかた見たこともない様々な調理用品を目撃して、充分なショックを受けていた。
崩れかけた大きな煉瓦のかまど。さびた銅製の鍋。土がこびり付いたままの野菜の山。
特にオリヴィアを驚かせたのは、壁際に吊るされていたウサギだった。
足首を縄で巻かれて逆さ吊りにされた茶色と白のまだら模様のウサギは、うつろに濁った目をしてだらりと垂れ下がっている。
もう死んでいるのは分かったが、オリヴィアはこんな風に生々しく保管される獲物を見たことがなかったから、突然ウサギがカッと目を見開いて縄を噛み切り、襲ってくるのではないかと気が気ではなかった。
「これは本当に滋養がつくよ! さぁ、たんと召し上がれ!」
マギーは満面の笑顔を浮かべながら丸い背を反らせて、まるでボウルの中身がキラキラ輝く宝石の集まりであるかのように、誇らしげに言った。
オリヴィアはつられて、にこりと微笑み返す。
しかし、目の前に置かれた、この灰色のような茶色のような、奇妙な色をしたどろどろのスープからは、嗅いだことのない生臭い香りが漂っていて──せっかくの微笑も、少し引きつったが。
食堂の中ではなく、調理場のこじんまりとした椅子と机に座らされていたオリヴィアは、すでに生まれてこのかた見たこともない様々な調理用品を目撃して、充分なショックを受けていた。
崩れかけた大きな煉瓦のかまど。さびた銅製の鍋。土がこびり付いたままの野菜の山。
特にオリヴィアを驚かせたのは、壁際に吊るされていたウサギだった。
足首を縄で巻かれて逆さ吊りにされた茶色と白のまだら模様のウサギは、うつろに濁った目をしてだらりと垂れ下がっている。
もう死んでいるのは分かったが、オリヴィアはこんな風に生々しく保管される獲物を見たことがなかったから、突然ウサギがカッと目を見開いて縄を噛み切り、襲ってくるのではないかと気が気ではなかった。