Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 そして、今、ノースウッド伯爵エドモンド・バレット卿は、妻の隣で白い布に包まれた小さな赤ちゃんを抱いている。
 小さくて、熱い。
 エドモンドは涙を止めることができなかった。

 小さくて、動いている。
 小さな手があって、それがなにかを探すように、不器用に動いていた。



 ああ……と、エドモンドは赤子に答えるように、涙ににじんだ優しい声を出した。ああ、そうだ、君のことはわたしが一生守ってあげよう。
 君のお母さんと一緒にね。



 可愛い女の赤ちゃんだった。



 オリヴィアによく似ているとエドモンドは思ったが、オリヴィアは、目の色はあなたのものだし、ほら、口元があなたにそっくりでしょう? と、いくつかエドモンドとの類似点をあげた。
 正直なところ、エドモンドにはそれがよく分からなかったが、そんなことは全く気にならない。

 オリヴィアと、赤ん坊……イザベラという名にしようと、ふと思いついた……が、彼の腕の中にいて、彼を見つめている。

 身体と魂の底から、底知れない力が湧いてくるような気がした。
 エドモンドは瞳に涙を浮かべたまま、すべてに降参するように、オリヴィアに長い長い感謝のキスをした。オリヴィアは微笑み、片手を伸ばして夫の涙を拭き取った。
 二人は額と額を合わせ、涙と一緒に微笑みながら、どれだけ互いを想っているかを伝え合った。



 そしていつか、エドモンドの愛情と、神の助けにより、二人はまた命を授かるだろう。
 冬の厳しい、しかし美しく繁栄したノースウッドは、その伯爵に導かれて、さらに物語を奏で続けていくのだ……。




【了】



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