Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
 私は一体、どんな女性と結婚してしまったのだろうか。
 そんな、おそろしく単純でいて、しかし答えのない疑問が、エドモンドの頭から離れない。

 オリヴィア・リッチモンドは、
 ──いや、違う。
 オリヴィア・バレットは、不思議な女性だった。

 まるで空のようだ。水色の澄んだ空。

 空高く、果てしなく広がる美しい原始の恵み。時に輝きを我らに与え、時に気紛れに嵐を起こす。それでも、我々は空がなければ生きていけない。

 青い空──。
 遠すぎて、手は届かないのに。





 エドモンドとローナンは、普段どおり食堂で早めの朝食をとっていた。
 献立はいつもと変わらないが、卵の数だけが極端に減っている。──奥さまが割っちまってね。と、マギーは苦笑しながら説明した。

 しかし、マギーの口調にオリヴィアを責めるような響きは一切なく、それどころか、この状況を面白がっているような感じがした。

 ──癇癪を起こさないでやってくださいよ、エドの旦那、マダムはマダムで頑張ってるんだよ。

 マギーは愉快そうにそう言うと、カカカという可笑しな笑い声を上げた。

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