Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜
A Whole New Life 新しい日々
どれだけ贔屓目に見ても、それは巨大な納屋だった。
それも──とびきり巨大な納屋だ。
ひょろりと背が高くて、がっしりと大地に根を下ろすように建っていて、余計な装飾はまったく無い。どの時代に建てられたのか建築の知識の薄いオリヴィアには想像もつかなかったが、おそらく三百年は下らないだろう。
それがバレット邸だという。
オリヴィアがこれから生涯を捧げる男の家だ。
納屋……の前に馬車が止まると、小姓らしき小柄な青年が駆け寄って来た。
馬車の扉が勢いよく開き、人懐っこそうな笑顔がのぞく。
「バレット旦那、よくぞお帰りになりました。お疲れでしょう、食事の用意ができていますよ!」
まず小姓がエドモンドの降台を手伝い、つづいてエドモンドが、オリヴィアが降りるのを手伝った。手を取られて地面に立つと、くらりと視界が揺れた。
宿屋で休息をとりつつとはいえ、三日も馬車に揺られ続けた身体はすっかり平衡感覚を失っていたのだ。
倒れそうになったオリヴィアの肢体を、エドモンドがしっかりと支える。
「しっかり立ちなさい」
とエドモンドは言った。
オリヴィアはうなずきつつ、彼を見上げた。同時に、彼の後ろにそびえ立つ……納屋を。
「素敵なお屋敷をお持ちですのね」
「何だって?」
「だって、こんなに大きな納屋をお持ちなら、本低はきっと素晴らしく大きいのでしょう? 私、迷子にならないかどうか不安になってきましたわ」
それも──とびきり巨大な納屋だ。
ひょろりと背が高くて、がっしりと大地に根を下ろすように建っていて、余計な装飾はまったく無い。どの時代に建てられたのか建築の知識の薄いオリヴィアには想像もつかなかったが、おそらく三百年は下らないだろう。
それがバレット邸だという。
オリヴィアがこれから生涯を捧げる男の家だ。
納屋……の前に馬車が止まると、小姓らしき小柄な青年が駆け寄って来た。
馬車の扉が勢いよく開き、人懐っこそうな笑顔がのぞく。
「バレット旦那、よくぞお帰りになりました。お疲れでしょう、食事の用意ができていますよ!」
まず小姓がエドモンドの降台を手伝い、つづいてエドモンドが、オリヴィアが降りるのを手伝った。手を取られて地面に立つと、くらりと視界が揺れた。
宿屋で休息をとりつつとはいえ、三日も馬車に揺られ続けた身体はすっかり平衡感覚を失っていたのだ。
倒れそうになったオリヴィアの肢体を、エドモンドがしっかりと支える。
「しっかり立ちなさい」
とエドモンドは言った。
オリヴィアはうなずきつつ、彼を見上げた。同時に、彼の後ろにそびえ立つ……納屋を。
「素敵なお屋敷をお持ちですのね」
「何だって?」
「だって、こんなに大きな納屋をお持ちなら、本低はきっと素晴らしく大きいのでしょう? 私、迷子にならないかどうか不安になってきましたわ」