重いけどいいの?お嬢サマ
✧お礼と悩み✧
◇*◇*◇
お坊ちゃんとの勝負がついてすぐ、佐藤には勝利の連絡をし、落ち着いたらまた帰ると言って週末、家へと戻ってきた。
「佐藤ー!」
「お嬢様」
迎えられる側だけど、お帰りの挨拶よりも先に佐藤へと抱きついた。
「佐藤さんずりぃ」
「佐藤さんずるぅ」
荷物持ちの奏矢と矢絃は、口を尖らせ佐藤を見ている。
「これは私の特権です。お嬢様の前で執事がそんな顔をしてはいけませんよ」
「とかいう佐藤さんも顔緩んでますよね?」
「うんうん。オレもそう思う」
かなやいの指摘に佐藤は咳払いをする。
そんな佐藤を見上げれば……確かに、と思わざるを得なかった。
「そ……それは失礼。ですが、緩んでしまいますな」
「珍しいね佐藤。私は嬉しいけど」
なにかと忙しい執事長の佐藤は、こんなに表情筋を緩ませることはほとんどないから。
「奏矢、矢絃。今回の件、よくやってくれました。……ありがとう」
佐藤は一度、すみませんと私を離し、二人を抱きしめた。
「え……ちょ、佐藤さん!?」
「し、執事長からのハグイベント?」
佐藤の腕の中で動揺する二人。だけど、佐藤はよりぎゅっと奏矢たちを抱きしめる。
「……頑張ってくれた、"私の孫"への愛情表現ですよ」
『っ……!!』
佐藤の言葉に、二人は目を見開いた。
そしてぎこちなく泳がせていた手はゆっくり、ゆっくりと佐藤へと回ったのだった。