重いけどいいの?お嬢サマ


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それから、マニュアルなのか分厚い本を手にし、佐藤に引きずられる兄弟を度々見かけることが増えた。


私は普段通りの生活を送り続けていたが、徐々に疲れた様子の二人を目撃することも増え、心配したりもしたが、

私にはあの二人の変化を感じて欲しい、と佐藤が言うので見かけても接する機会はないに等しかった。


その後、佐藤は見てもほとんど二人を見かけなくなり……



約三ヶ月半が経ったある日、一度だけフォーマルな二人の姿──執事服を身に付けていたところを目撃したこともあった。

その時にはもう引きずられる、なんてことはなかったみたいだけど。


そして、約半年が経った頃──



『お帰りなさいませ、お嬢様』


聞きなれない二人分の声に、家に入るなり足を止めた私は、二度見、三度見してしまうほど、久しぶりに九重兄弟を間近で見た。


あの乱暴な口調も態度も、どこへ消えたのか、穏やかな面持ちで私を迎えた二人に、肩から制服のジャケットがずり落ちた。



──あの衝撃は、今でも忘れられないくらい。
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