ガテン系おまわりさんの、溺愛彼女
『少し熱が出たぐらいで、親を呼ばないでください! 本人はこんなに元気じゃないですか!! うちは共働きだし、先生と違って仕事で忙しいんですよ!!』

『貴女みたいな頼りない先生にうちの子を任せるなんて、心配だわ。担当の先生を変えてくれます?』

『今日は弁当持参の日? ああ、忘れたんで、適当に食べさせといてもらえます? は、無理? なんでですか!?』

 当時、私は二歳児のクラスを担当していたのだが、様々な事情を抱えた保護者がいた。保護者の方から厳しい言葉を投げられることも増えて、心は次第に削れていった。

『もう二年目でしょう? 相変わらず、橘先生は要領が悪いわね』

 追い打ちをかけるように、先輩の主任保育士はそう言って私をなじった。主任は園長先生の娘ということもあり、逆らうことはおろか、反論することすらできない存在だった。

『迷惑なのが分からないの?』

『貴女みたいなのを、役立たずって言うのよ』

『全然、駄目ね。呆れたわ』

 辛辣な言葉は矢のように心に突き刺さり、私な次第に、子どもたちへの接し方に自信が持てなくなっていった。

『貴女みたいなグズグズした人は、子どもと関わる仕事に向いてないわよ』

 主任に言われたこのひと言で、私の心は完全に折れてしまった。

 そして三年目の冬。私はとうとう、退職を決めたのだった。
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