社長の推しは、地味メガネのわたしでした。
「ずっと誰かの代わりだった。両親の代わり、妹の代わり……、自我を押し殺して生きてきた。『穂花』は誰かの代わりじゃないって叫びたかった。私は私であって誰かの代わりではないと」

 そう……、穂花は誰かの代わりではない。

 誰かの影となり生きることを望む人間などいない。そんなこともわからなくなるほど、自我を押し殺して生きてきた私を解放したのは間違いなく目の前にいる彼だった。

「――颯真さん、貴方がいたから一歩前へと進めた。そして、誰かの代わりでしかなかった私を大切だと言ってくれた貴方の言葉が罪悪感で押しつぶされそうな私の心を奮い立たせてくれた」

 彼の胸へと置いていた手をキュッと握る。

「どうか、お願いです。何も聞かないで見守ってって言うのは勝手だと思う。だけど妹とのことは自分で決着をつけないと意味がないの。そうしなければ、本当の意味であなたの想いに応えることが出来ない」

「そう……、やっぱり穂花はそう言うんだね。最後の最後は自分で道を切りひらく穂花だから惚れたのかな、きっと……」

 ボソっと言われた最後の言葉が心を熱くする。

 きっと、彼は私が『花音』だと気づいている。そして、妹の影としての存在であることも。

 そのことに気づいていながら何も言わず、見守る選択をしてくれた。

 だからこそ、彼の想いに応えたい。

「颯真さん! 見ていてください。自分らしく生きるために戦ってきます」

 そう言った私を見つめる颯真さんの表情は、昇り始めた太陽の光が眩しくてはっきりとは見えない。

 でも、わかる。

 きっと彼は、私のわがままに笑ってくれている。
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