社長の推しは、地味メガネのわたしでした。
「二人が納得する方法があるなら、私は律季の提案に従う」

「そうか。なら、俺からの提案だ。穂花が怪我をした美春の代役としてステージに立つことが出来れば、花音を引退することを認める」

「えっ……、美春の代役?」

「そうだ。美春の怪我は全治三ヶ月。三ヶ月後に行われる鏡レンナのライブに立つことは不可能だ。チケットが発売になっている状態で、中止にすることは現実的に難しい。そこで、そのライブを『花音引退ライブ』兼、『鏡レンナ再出発ライブ』とする。それが出来れば、花音引退の影響を最小限に抑えつつ、鏡レンナの再出発をファンに印象付けられる。穂花、お前にステージに立つ覚悟はあるのか?」

 私が、ステージに立つ。花音として……

「律季、それは……、花音の映像を流すライブではないということよね?」

「そうだ。花音として、穂花、お前自身がステージに立つ」

 顔を晒し、ステージに立つ。そんなこと、今の私に出来るの?

 想像すればするほど、恐怖が胸を迫り上がり足がふるえる。

 怖くて、怖くて仕方ない。

「はは、お姉ちゃんがステージに立つ? そんなこと出来るわけないじゃない。顔を晒すのが怖くて鏡レンナを私に押し付けたお姉ちゃんが立てるわけない!」

 そう、全てはあの日から始まったのだ。妹に『鏡レンナ』としてのデビューを押しつけたあの日から、私の影としての人生が始まった。

 すべて、弱かった私の責任。

 律季は、私の覚悟を問うている。今の人生と訣別する覚悟を。

「律季、そして美春。私、ステージに立つ! 花音と訣別するために」
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