社長の推しは、地味メガネのわたしでした。
 美春の影となり奪われた人生。大なり小なり、律季が美春に協力していたことはわかっていた。でも、今思えば、律季も難しい立場を強いられていたことも理解できるのだ。そして、美春には美春の事情があったことも。

 そして、二人がすべて悪かったわけではない。自分の弱さが招いた結果でもあるのだ。

 だからこそ、強くなりたいと切に思う。

「律季、謝らないで。三人の関係は確かに歪だったけど、誰が悪いとかじゃないと思うの。美春も律季も、そして私も、己の弱さが招いた結果だった。でも、人はやり直せる。そう思ったから、律季も私にチャンスをくれたんでしょ。一歩踏み出すチャンスを」

「あぁ……、俺も変わりたかったんだと思う。影の道を強いられて来た穂花が、光のステージに立つ。そんな姿を見れば、俺も変われるような気がしたんだよ。まぁ、俺に発破をかけたのが、あの男だと思うとムカつくけどな。一色さんとは会っているのか?」

 律季の問いに、首を横に振る。

 あの日から、颯真さんとは会っていない。

 寂しくないかと言えば、正直寂しくて仕方ない。ただ、中途半端な自分では彼に会うことなんて出来ない。

『花音』としての最後のステージを成功させ、穂花として彼の前に立ちたい。そして心に秘め続けた想いを伝えたい。

――颯真さんが好きだと。

 その想いだけで、今日まで頑張ってきたのだ。

「そうか……、今でもアイツのことが好きなのか?」

「――好きよ」

「はっきり言うんだな」

「だって、もう自分の気持ちを我慢しないって決めたから」

「自分の想いを我慢しないか……、会わないうちに、穂花は強くなったんだな」

「強くならなきゃ、前に進めないから」

「……そうだな、前に進むためにか。俺も、美春も変わらないとだな」

 天を仰いで、深く息を吐いた律季を見て問いかける。
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