Dearest 2nd 〜Moon〜
「……寒っ…」
マリアはまた一匹狼の如く、いつの間にかうまいこと人混みをすり抜けてどこかへ行ってしまった。
「んー…」
彩どこ行った?
はぐれてしまった彩を、グルリと見渡し探すが
「───あっさおっかさーんっ!」
━━━━━ドンっ!
「─────!?!?」
俺よりも早く、探していた本人の彩から背中にタックルされて振り返る。
「──あぁ、彩かぁ……。びっくりした。」
振り向くと、彩は息を弾ませながらニコニコと嬉しそうに笑っている。
モコモコの耳当てに、ふわふわと揺れる髪が可愛い。
「───…あ。彩寒ない?何か温かいもん飲めへん?」
「うんっ、飲むっ♪」
「じゃとりあえず抜けよっか。」
ごったごいする人波をすり抜け、自販機の前まで移動し
「彩はホットミルクティー?」
「もっちろん★」
「了解♪」
────ガシャン!
彩にはもう聞かなくても分かる定番のミルクティーを手渡し、景色がよく見渡せる場所へと移動した。
「寒くない?」
「うん、大丈夫♪
あっ、ねぇ見て朝岡さん!夜景綺麗だよ!!」
「おー♪けっこう穴場やねんなぁ、ここ。」
「ねー…綺麗だよね。」
神社はまぁまぁな高い場所に位置している為、ここら辺の景色を一望出来るようになっていた。
───…こんな夜景綺麗なんて知らんかったな。
吐いた白い息が、すぐに夜の空へと同化するように消えて行く。
キラキラと輝く夜の光を瞳いっぱいに映し、彩は嬉しそうに微笑んだ。
「……彩、今日は来てくれてありがとうな。」
「……ううん。
こうやって初めて朝岡さんのお誕生日をお祝い出来てよかった……。」
───ガキの頃は1月1日とかいう元旦なんて誕生日、いつも損してる気分だったけど。
……今はちょっと感謝かな。
「……朝岡さんは何時に産まれたの?」
「……えー…………
せやなぁ、確か夜の1時半くらいやったと思う。」
多分、だけど。
そんな彩はサッと腕時計を見つめ、次の瞬間驚いた様に声を上げた。
「………半じゃん!!!!!
ジャストだよ朝岡さん!」
「え?………マジか。」
「───すっごーい!!!!」
見て、と彩は細い腕に掛かっているピンクゴールドの時計を俺に見せてくれた。
───…チッチッ……。
細い針と長い針が表しているのは確かに1時半。
うわ、マジやん。
すげぇな……
「───…朝岡さん……」
「ん?」
「………お誕生日……
おめでとう──……」
「……ありがとう……」
数時間前まで忘れていた、自分が生まれた日。
どうでも良かった、どうでもいい1日。
それが一変して、君がいるだけでこんなに尊い1日に姿を変える。
……ガキの頃。
─────…“もしお袋が生きていたら”、と。
誕生日を迎えては、お袋がいない誕生日なんて虚しいだけだった。
来るたびに、“もう二度と誕生日なんか来るな”と何度心の中でこの日を恨んだ事だろう。
誕生日なんて、寂しさや孤独を募らせる日。
一番そばにいて欲しい人が、一番そばにいない事を嫌でも思い知らされてしまう残酷な日。
……そう思っていた哀しい人間だった。
─────…君や、仲間に出逢うまではね。