Dearest 2nd 〜Moon〜
……後日、弥生とメールのラリーを交わして会う日が決まった。
弥生はたまたまなのか、会うのを“彩の卒業式の日”に指定してきた。
………けど、さすがにそれは断った。
俺は結局何でも彩を優先させてしまうんだな、と自分で自分に笑ってしまった。
────……そして。
弥生に会う日の当日。
「────純、今日は車で行っちゃダメだよ!!」
「……はぁ?まぁ電車やけど。」
「だって車だと二人っきり!!
何が起こるか分かんないマジック発動するかもしれないじゃん!!」
「……何がやねん……」
ハァっと溜め息ついでに、吾郎が作った朝食に手を伸ばした。
何故かって昨日吾郎と壱の家に泊まったからだ。
泊まる気は無かったけれど、前日に吾郎と壱の家に寄って晩飯食ったら居心地良すぎてそのまま泊まってしまった。
だからこうやって吾郎と壱、俺の三人で仲良く(?)朝食を囲んでいるけれど、さっきから猿が横でギャーギャーうるさい。
……理由は今日の弥生と会うプランについて、だそうだ。
「……まぁまぁ壱。
ちょっと心配し過ぎだろ、純もそこまで変貌するオオカミじゃないよ。……なぁ純?」
「いや……だからオオカミて」
コーヒー啜りつつ、また言われもしないオオカミ変貌疑惑を否定した。
……ロリコン疑惑といい、全く俺にはいくつ疑惑があるんだよ。
「────いや〜だって心配なんだもん!!
聞いてゴローちゃん!
純泊まりで服ないって言うから、さっき服貸してあげたの!!!
アヤヤとデートじゃないから、どーでもいいテキトーなダッサイ服!!
そしたらね、これがムカつく事に何でか純が着たら、めちゃくちゃカッコよくなっちゃったの!!
────可笑しくない!?」
「ぶふっ」
吾郎は壱の熱弁に、飲んでいたコーヒーを吹き出して笑った。
「……ダサい服って。お前そんなん俺に着せたんかコラ」
「────えっ⁉あっ!!
いや違うよ!一応これは褒めてるんだよ!?
ダサい服でも純だったらカッコよく着こなしちゃうって事!」
ジリジリと壱の背後に近寄り、ムギュっとほっぺたをつねる。
「ギャーいたぁーい!!!!」
「自業自得だバカ猿が」
フンッと壱の頬から手を離し、バサリと上着を羽織る。
「もう行くのか?早いな」
「ん、電車やからね。ごちそーさん」
吾郎に片した食器を手渡し、財布と今日は使わないキーケースをポケットに突っ込んだ。
「はぁぁ〜〜。アヤヤの身になると胸がイタイなぁ〜…罪悪感満載ー。」
「……何でお前が罪悪感感じるんだよ壱……」
「・・・・・」
玄関まで見送りに来た壱と吾郎の会話を背に苦笑いし、靴を履く。
「……よしっと。んじゃ行ってくる」
────カチャ……
ドアノブに手をかけたところで
「────純っっっ!!早く帰って来るんだよ!!
それからくれぐれも気がブレないようにね!!
ラブホとか誘っちゃダメだよ!!!
あ、そうだ心配だからGPS付け……」
━━━━━バタンッ!!
ゴチャゴチャ続ける壱の話を、思いっきりドアを締めて遮ってやった。
……ってか黙って聞いてりゃラブホって何じゃ!!!!!!
しかも何で俺の方から誘う予定やねん!!
「ちょっとぉー!!純ーーーッッッ」
「────うっさい!!お前は!
誰がラブホなんか行くか!!!!」
「△○×□♡〜!!!」
「……はぁ〜もぅ…………」
────くしゃっ…
閉めたドアの裏でまだ何か叫んでいる壱に、髪をくしゃくしゃと掻き上げて俺は歩き出した。


