その息尽きるまで時間は無限
うらめしくにらんでいると、濡沢の長い髪から覗く方が、上に持ち上がった。


妖艶なその微笑が、この世のどんなものよりも怖く、恐ろしく、美しく感じてしまった。

冷や汗が、自分の浮き出た背骨を伝う。


ほんの少し、ーーーー具体的にいうならば、12度ほどーーー濡沢がこちらを向いた。






目には、光がなかった。





これが全てに絶望し、全てを諦め、全てを覚悟した人間なのだと、バカが俺の脳みそでもわかった。





だめだ、怖い。






こわい、目を逸らしたい。

でも先ほどの金縛りのように体が動かない。





これと反対に、濡沢を美しく感じてしまう自分もいた。







早く、はやく、母さん、早くきてくれ。




強く念じた。

濡沢と目が合っている今の状況が、言葉じゃ表せないほどの恐怖なのだ。
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