警視正は彼女の心を逮捕する
光り輝く、翌朝
 車に乗るとき、運転中。
 鷹士さんは無言だった。

 けれど赤信号になると、車のシフトレバーから手を離し、私の手を握る。

 私は、いつも大好きな助手席の景色を楽しむ余裕はなくて。
 ただ、膝の上にある自分の手に触れてくる、鷹士さんの手を見つめていた。

 大きな手。
 私も女性としては大きな手をしていると思うけれど、すっぽり包まれてしまう。

 手袋をしていても、どうしても荒れてしまう手を愛おしそうに撫でてくれる鷹士さんの手は滑らかで、筋張っている。

 この手が、私の髪や頬、唇に。そして腰に触れていた。

 思い至った瞬間、ぶわっと体が熱くなる。
 ちょうど触れていた鷹士さんにも伝わってしまったのか、心配そうな声で聞かれた。

「日菜乃? 体が熱いようだが。大丈」

 不自然に言葉が途切れた彼を、今度は私が見つめる。
 ギラギラとした目で私を見つめている、男がいた。

「……どう、したんですか」
「無自覚か」

 彼の唇が、そんな形に動いた。

 手のひらが目の前に近づいてくる。
 パッと顔を覆われてしまった。

「そんな顔をしないの」

 困ったような言葉。
 でも鷹士さんの声が、照れている?
 気になる。
 
「私、どんな顔をしているんですか」
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