警視正は彼女の心を逮捕する
 艶のあるバリトンが背中をゾクっとさせる。
 そして、言葉の意味を理解してしまい。
 
「なっ」

 瞬間、自分の顔が真っ赤になるのがわかる。

「……なんて、ね」

 にっこりと鷹士さんが笑う。

「冗談なら、タチが悪いです」
 
 私が睨む。

「本気なら許してくれるのか?」

 なんとも色っぽい目で見つめられる。
 ダメだ、なんでも言うことをききたくなりそう。

 ……ホールドアップの体勢で、私が壁にへばりついていたせいだろうか。
 彼はなんとも胡散臭いの笑みを浮かべみせる。

「まだ、逃してあげるよ」

 まだ、ってなに?
 私は内心で悲鳴をあげる。
< 24 / 223 >

この作品をシェア

pagetop