【完結】七年越しの初恋は甘く熱く、ほろ苦く。
「俺は絵梨沙のことが、羨ましいよ」
「そんな……普通の人生だよ」
「その普通が、一番じゃないかなって思うけど」
普通が一番だと、俺は本当にそう思う。 何にも縛られずに生きていけたら、俺だって楽だしそれが良かった。
医者の息子に産まれた宿命というヤツだろうが、俺は医者になる気はさらさらなかった。
今思うとあれは、普通に生きていきたいという俺の家族への反発心だったのかもしれないな。
だから俺は、普通に好きなことをして生きていける絵梨沙のことが羨ましいと感じたのかもしれない。……絵梨沙に対して憧れてるんだな、俺は。
そんなことを思うなんて情けないけど、本当のことなんだ。
絵梨沙のそういう素直な気持ちを伝えられるところが、尊敬するところだ。
そういえばあの時も、絵梨沙は俺にストレートに聞いてきたな。
【三国くんは……私のこと、抱ける?】
【え……?】
あの時は何を言っているんだと思ったけど、こんなストレートにセックス出来るのかと聞ける勇気を、俺は今なら称えることが出来るだろう。
【お願い。答えて、三国くん。……私のこと、三国くんは抱ける?】
【それって……セックス出来るか、ってこと?】
【そう。私と、セックス出来る?】
【絵梨沙……君は本気で言ってるのか?】
俺がそう聞いたら、絵梨沙は少し震えた声で【……本気に決まってるじゃない】と言ったんだ。
あの時、本当は絵梨沙のことをギュッと抱き締めたかったけど、それは絵梨沙には内緒にしておこう。