【完結】七年越しの初恋は甘く熱く、ほろ苦く。


「すごいね、三国くん……エリートなんだ」
 
「そんな、大したことないよ」

 まあ弁護士になるために、めちゃくちゃ勉強したのに間違いはないけど。

「三国くん、いつ弁護士になったの?」

「……四年前」

「そうなんだ。 弁護士とか、すごいね」

「まあ、弁護士になったのも……親への反発心からなんだけど」
 
「え……?」

 俺は絵梨沙に弁護士になった経緯を歩きながら話すことにした。

「絵梨沙も知ってる通り、うちは父親が外科医だろ? だけど俺は昔から医者にはなりたくなくて、だからその反発心から弁護士になることを選んだんだ」

「……そうなんだ。 なんか、ごめんね」

「別に絵梨沙が謝ることじゃない」

 絵梨沙は何も悪くない。

「……絵梨沙は、なんで本屋で働いてんの?」

 俺も興味本位でそう聞いてみると、絵梨沙はすぐに「本が好きだから。 ただそれだけだよ」と答えてくれた。

「へえ。 好きなこと仕事に出来るって、なんか良いな」

「そうかな? 単純だよ」

 単純か……。俺にとって絵梨沙のその言葉が羨ましくも感じた。

「好きなこと出来るのって、恵まれてるってことだろ?」

「恵まれてる……?」

「ああ」
 
 俺は恵まれてるのかどうかもわからない。 そもそも、父親から「お前も俺の跡を継いで医者になるんだぞ」とずっと言われていたのに、俺はそれを無視して弁護士になった訳だし。
 医者にはならないと反発した俺に、呆れた父親にはあれから見放されているし。……恵まれてはないだろうな。
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