最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「固いこと言うなよ。俺のばあちゃんちの家でもあるんだぞ」

 姿勢を変えず、スマホを眺めながら裕也は何食わぬ顔で告げてきた。

「よく言うわね。おばあちゃんが倒れたとき、お見舞いに一度も来たことないじゃない。この前の四十九日だって……」

 彼はすべてを無視した。けれど、おばあちゃんを悼む気持ちがないのに、来てもらってもきっと腹が立つだけだ。

「しょうがないだろ。俺だって忙しいんだ。それより聞いたぞ、臨。お前、二神不動産の副社長と結婚したんだって?」

 裕也はソファから上半身を起こし、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべて聞いてきた。

「お前もやるよな。どんな手を使ったんだよ? 昔から同情を買うのはうまかったもんな。自分は可哀想だって顔して」

「そんな顔、していない!」

 つらいときがなかったといえば嘘になるが、自分を可哀相だとアピールしたり、同情を誘ったりするような真似はしていない。なにより私はおばあちゃんがいて幸せだった。

「なら、なにをしたんだよ? 普通に考えて二神不動産の次期社長が、お前みたいな人間を選ぶわけないだろ。相手なんて選び放題だろうに」

 裕也の指摘に口をつぐむ。その指摘は事実だ。押し黙った私に、裕也はおかしそうに畳みかけてくる。
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